小説『27歳の僕と、音楽の在る世界に対する新たな調べ』原文 パパ

音楽
Comfreak / Pixabay

書きかけの小説です。

 

戦闘機の夢

目を開けると、空が広がっていた。どこまでも続く広い空だ。それが自分の家の天井ではないことにもすぐに気づいた。

あれ、ここはどこだろう?

体が熱い。すぐに、アスファルトの上に寝ている事に気づいた。太陽が照り付けていることでアスファルトが熱せられているらしい。僕は上体を起こし、辺りを見渡す。

視線の先には真っすぐに伸びた滑走路があった。

「滑走路?」

そしてその先には、戦闘機が一機止まっているのが見える。

「なんで、戦闘機があるんだ?」

プロペラが機体の前に一つだけ付いた戦闘機が、そこに止まっていた。色はグレーだろうか。

コックピットの方に視線を移してみる。誰も乗っていない。無人の状態で置かれているだけだ。状況が理解できない。僕の疑問は拡大していく。

もっとくまなく周囲を見渡すべく、ピントを戦闘機のその先へ合わせた。

「海の上?」

戦闘機の先は、灰色の空と白波の立っている海が広がっている。他にさえぎるものがないためか、風が吹いていることをダイレクトに体で感じる。

状況が理解できない。僕は白いシャツと黒い長ズボンを履いている。その白シャツは、どこか懐かしい白シャツだった。日が照っていて、暑い。僕はシャツの袖をまくった。

寝ている間に何かあったのか?

僕は立ち上がって、周りをくまなく見渡す。どうやら航空母艦の上にいるらしい。

「なぜ?」

自問自答する。誰かが僕をここへ連れてきた?

 

ブォォォォン――

 

突然、轟音が聞こえてきた。

僕は急いで耳を両手で塞いで、音のする方向を見た。

さっきまで誰も乗っていなかったはずの戦闘機のコックピットに、誰かが座っている。ガラス越しであることに加えて、パイロットはゴーグルを装着しているから、顔までははっきりと見えない。でも確かに、人だ。

機体の前に一つ付いているプロペラが、轟音を出しながら高速で回転している。

音がより一層大きくなったのを感じ、それと同時に、ゆっくりと戦闘機が前の方へ動き出した。

 

状況が呑み込めない僕は、戦闘機を目の前にして不思議な気持ちになった。ただ、戦闘機をすぐに止めなければならない、という気持ちになった。何かマズいことが起きる。僕はそう確信していた。もうそう感じた瞬間から、耳を抑えていた両手を離して、腕を前後に懸命に振りながら必死で走った。いち早く戦闘機に近づく必要があると思った。

「行っちゃだめだ――」自然にそんな言葉が出た。

何度も何度もその言葉を叫びながら走る。何故かは分からない。涙が溢れて、僕の後方に落下していった。

戦闘機はみるみるうちにスピードを上げて遂には勢いよく走り出した。

僕の方を目掛けて、猛スピードで近づいてくる。僕は両手を精一杯広げる。

行っちゃだめだ」全身全霊で叫ぶ。ダメだ、パイロットは僕の存在に気づいていない。

戦闘機の左翼が僕にどんどん迫ってくる。ダメだ、飛んで行ってしまう。

 

タイヤが浮き上がろうとしている機体の、迫りくる左翼を僕は無我夢中で掴んだ――。

次の瞬間、全身に物凄い衝撃が走った。それと同時に、足が地面から離れた。とてつもない風圧が体を襲う。苦しい。息ができない。腕力が尽きてしまったら間違いなく振り落とされる。戦闘機は物凄い速度で風を切って飛行していく。僕は戦闘機から振り落とされないように、必死に左翼にしがみつく。

何分くらい飛行したのだろう。意識がもうろうとしてきている。既に体力の限界は超えている。もうダメか。腕がもたない。

 

ダッダッダッ――

 

突然、金属の重低音が聞こえてきた。

「なんだ!?」

見ると、戦闘機のコックピットの側面部に、無数の穴が空いている。さっきまではなかったはずだ。弾痕?撃たれたのか!? 分からない、だけど、何かが命中した可能性が高い。

穴の開いた部分から、淡いグレーの液体がこぼれ出している。このままじゃマズい。絶対にマズい。何かしなきゃ。だけど、自分に何ができる!?

機体の側面からは白煙が上がり始めた。「ダメだ、墜落する!!」直感的にそう思った。

パイロットは、気づいているのか!? だめだ、伝える術がない。もう腕の力も限界だ。

 

戦闘機が突然、急降下を始めた。

うわぁぁぁ――

体に更なる重圧がのしかかる。

次の瞬間、いきなり戦闘機が傾いて、強烈な力が体にかかって、僕は左翼から手を放してしまった。

うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ――」僕は空中に吹っ飛ばされた。

戦闘機がグルりと一回転したことで振り落とされたことが、その直後に分かった。体が宙を舞う。

 

戦闘機は、毎秒ごとに機体に無数の穴が増えていく。僕は無理やり顔を別の方向に変えた。

遠くの海に、巨大な軍艦が複数隻いることに気づいた。そこから僕がつかまっていた戦闘機目掛けて無数の弾丸を発射しているらしいことが分かった。

同時に僕は、水面に近いところまで落下していることを知った。水面までは30メートルほどだろうか。いや、正確な高さは分からない。マズい、海にぶつかって、死ぬ。そう思った。

弾痕が毎秒ごとに増えていく戦闘機は、いつしか白煙から黒煙へと変わっていた。そして、遂にはコントロールを完全に失った――。

無数の軍艦を目の前にして、戦闘機はその手前の海面に衝突して、黒煙をあげながら爆発した。

その直後に、僕も海面に叩きつけられた。

全てが一瞬の出来事だった。

 

冷たい水が瞬く間に服を重くする。体温がどんどんと奪われていく気がする。呼吸もできない。早く水面に出なきゃ。急げ、急げ――。意識が薄れていく――。

 

視界が真っ暗になった。

 

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